成果の概要・ポイント
- ジョブ数に応じて 0台から最大500インスタンスまで伸縮する分散レンダリング基盤を構築
- VMware から GCP・AWS へ、事業環境の変化に追随しながら 2012年〜2018年の6年間を継続運用
- 10件以上の CG スタジオで商用利用
利用技術
- クラウド: Google Cloud Platform、Amazon Web Services
- 仮想化: VMware
- レンダリング管理: Deadline
- 対応CGアプリケーション: Maya、3ds Max、Houdini ほか
プロジェクトの概要
CGスタジオ向けにレンダリングサービスの展開を計画されていたお客様より、レンダリング処理のクラウド化についてご相談をいただきました。お客様自身がレンダリングサービスの提供事業者となり、その利用者が CG スタジオという構造です。
当社の担当範囲は、基盤の設計・構築・運用のすべてです。
- Deadline のサーバー環境は全面的に担当
- クライアント側の設定も、少なくとも最初の数台分は実施し、操作方法のレクチャーも実施
- CGアプリケーションが期待どおりに動かない場合は、テクニカルアーティストの方と連携してトラブルシューティング
- Deadline へのジョブ投入の自動処理などは、他のエンジニアと連携して対応
背景と課題
このサービスが解こうとしていたのは、CG制作の現場が抱える次の課題です。
- レンダリング処理の負荷集中: 大規模プロジェクトで処理能力が不足する
- 設備投資の課題: 高性能なレンダリング機材の初期コストと維持費用が重い
- 処理時間の長期化: 締切に間に合わない案件が発生する
- リソース管理の複雑さ: プロジェクト規模に応じた柔軟なリソース調整が難しい
移行の経緯
VMware → GCP → AWS という移行の順序は、技術的な優劣で決めたものではなく、主に顧客側の事情によるものです。
当初 VMware を採ったのは、当時のパブリッククラウドに CPU コア数の大きいインスタンスがなかったことに加え、顧客が提携するデータセンターがあったためです。GCP へ移ったのは、途中から Google との連携の話が出てきたため。AWS へ広げたのは、Deadline の開発元が AWS に買収され、AWS が Deadline と合わせて提案していく方針になったためです。
GCP と AWS は並行して運用しました。GCP 上で稼働している既存の利用者がいたためです。
AWS 側では、Deadline が提供を始めた自動設定の仕組みを利用しました。ただし登場して間もない時期で、こちらの要件には柔軟性が足りず、個別に手を入れる必要がありました。
レンダリング管理に Deadline を採用した理由
顧客が Deadline の日本代理店であったことが第一の理由です。加えて、日本の CG スタジオでの利用が多く、機能面でも他社製品より優れていました。
技術的特徴
自動スケーリング
ジョブがないときはレンダリングサーバーを 0台まで落とし、ジョブが投入されると規定数を起動、以降はジョブ数に応じて増減させる構成です。レンダリングは必要なときにだけ大量の計算資源を要するため、待機させておくと費用がそのまま無駄になります。
分散処理とCGアプリケーション対応
Maya、3ds Max、Houdini など主要な CG アプリケーションに対応し、効率的なジョブ分散とリソース管理を行える構成としました。
運用・監視
2012年から2018年まで、6年間にわたって運用を継続しました。
24時間の有人監視は行っていません。 自動監視でアラートを飛ばす構成です。レンダリングは失敗してもリトライすれば済むタスクであり、顧客側には元々の設備もあるため、完全に停止する事態にはならないという判断です。
運用は当社の1名体制で回していました。ただし、このサービス自体が設備を追加するものである以上、顧客全体の運用の手間が減ったわけではありません。
実績
- 最大500インスタンスの同時稼働
- 10件以上の CG スタジオでの商用利用
- TV放送: NHKスペシャル「人体」(2014年、2017〜2018年)
- 映画: 株式会社スクウェア・エニックス 映画「KINGS GLAIVE FINAL FANTASY XV」(2015〜2016年)
納期への効果
「制作期間の短縮」という言い方よりも、実態としては厳しい納期に間に合わせるために使われた、というほうが近いものでした。そのまま自前の設備だけで進めていたら終わらなかったはずの案件が、この基盤によって成立しています。
まとめ
本プロジェクトは、レンダリングサービスという事業そのものの基盤を、設計から6年間の運用まで引き受けた事例です。
基盤の置き場所は、この6年間で VMware から GCP、そして AWS へと変わりました。その判断はいずれも技術的な優劣ではなく、事業上の関係の変化によるものです。